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おてつぎ運動

特集記事

2015年10月

『お念仏と出逢う「てらこやフェスタ」、全国各地へ』山形教区向谷寺副住職 西嵜覚信

子供も大人もめいっぱい向谷寺を楽しんだ
第1回てらこやフェスタ。平成26年6月7日

若手僧侶により組織される全国浄土宗青年会が、各地のお寺を舞台に「命輝き てらこやフェスタ」という大規模なフェスタ(祭り)を展開し話題を集めている。同会の理事長でありフェスタ仕掛け人の西嵜覚信さん(43)にその意気込みをうかがった。

お寺に人が来てほしい

山形駅から静かな街並みを眺めながら北西の方角へと車で走ることおよそ15分。伝統的なたたずまいの向谷寺に着くと、山門前には「施餓鬼会」を案内する看板とならんで「てらヨガ」と書かれた黒板があった。

私が「なぜお寺でヨガを?」と聞くと、

「もちろんお寺に人が来てほしいからです」

と、迷いない言葉が即座に返ってきた。心の底からお寺が、それも生まれ育った向谷寺が好きなんだろうと感じた。

「幼かった頃、お寺はコミュニティの中心でした。3年前に亡くなった祖母が元気だった頃はお寺にふらっと立ち寄る地域の人を迎えていました。でも、私が成長するにつれお寺に人は来なくなり、いまではお葬式や法事の時だけしか接点がありません。ヨガをやってもらうと地域の人が来てくれます。やっぱりお寺は賑やかなのが一番です。話していると気持ちが打ち解けて、気持ちが通じ合っていく。何気ないけれど深みのあるコミュニケーションをしたいですね」

東日本大震災とお念仏の世界

いまでこそ積極的な活動を展開する西嵜さんだが、数年前まではお寺離れが進む状況をただ漠然と見つめていた。転機となったのは東日本大震災だった。

2011年3月に震災が発生し、その翌月に宮城県沿岸部の浄土宗寺院に行くと、境内には瓦礫があふれ、お墓はことごとく倒れていた。山形県内の青年僧侶たちに支援活動を呼びかけ、月に3回ほど被災地をたずねて遺骨を収拾し、瓦礫を撤去した。その翌年の2012年4月からは東北ブロックの浄土宗青年会理事長をつとめることになり、仮設住宅を訪問して炊き出しをしたり傾聴したりという活動にも取り組んだ。

「僧侶が訪ねていく意味があるのかと最初は半信半疑でしたが、何度も訪ねて信頼関係ができてくると、仏教の話をするようになりました。お念仏をすれば救われるという信仰の世界を多くの人々が求めていることを実感しました」

手を合わせてただお念仏を称えれば救われるという法然上人の教えを、いま自分たちが語り継がなければいけないと思い知った。

お寺から命の輝きを

子供たちと一緒に数珠づくりのワークショップ

棺の中でお経を聞くと「穏やかな気持ちになれた」
などの感想が寄せられた

2014年4月に全国浄土宗青年会の理事長に就任し、西嵜さんは全国各地で「命輝き てらこやフェスタ」を開催しようと発案した。

「なぜフェスタを行う必要があるのか周囲は理解してくれませんでした。でも、去年の6月7日に向谷寺で初めて開催し、納棺体験や数珠づくり、お坊さん体験などを企画したところ、550人もの参加をいただき大成功をおさめました。仏教と関わりたい人は大勢いる――私が震災復興支援を通じて実感してきたことを、フェスタによって全国の若手のお坊さんたちと共有できたように思います」

向谷寺で開催された後、昨年は愛媛県、広島県、岡山県、北海道でも実施され、合計1,400人以上がお寺に足を運んだ。今年はさらに盛り上がり、三重県、福井県、長崎県、富山県、新潟県ですでに実施。今後の予定(下記参照)も含めると十か所で開催される見通しだ。

「9年後には法然上人が浄土宗を開いて850年というお祝いの年を迎えます。フェスタがもっともっと盛り上がり、多くの人々とお念仏の教えをお祝いし、お寺を中心に命の輝きが取り戻されていくことを願っています」

「忙しくなりますね」とたずねてみると、

「全国を飛び回っているよりも、このお寺で地域の人々を迎え続けたいんですけどね。私はこの向谷寺が一番落ち着きますから」

と優しく微笑んだ。飾らない言葉はお寺と郷土へのあたたかい想いに満ちていた。

(取材・文 池口龍法)

てらこやフェスタ[今後の予定]
●平成27年 10月18日(日)
 会場:浄勝寺(千葉県船橋市本町3-36-32)
●平成27年 10月18日(日)
 会場:長昌寺(大分県杵築市南杵築380)
    正覚寺(大分県杵築市南杵築371)
●平成27年 10月25日(日) 午後1時より午後5時30分
 会場:光明寺(兵庫県尼崎市西難波町5-9-20)
●平成27年 11月6日(金)~7日(土) 午後6時より午後9時
 会場:常善寺(滋賀県草津市草津3-9-7)
    正定寺(滋賀県草津市草津3-11-39)
●平成27年 11月7日(土)
 会場:如来寺(石川県金沢市小立野5-1-15)
プロフィール
西嵜 覚信(にしざき かくしん)
1972年生まれ。山形教区上組向谷寺副住職。
2012年4月より東北ブロック浄土宗青年会理事長(~2014年3月)。
2014年4月より第23期全国浄土宗青年会理事長(~2016年3月)。


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